モーリーchに出てた大田俊寛氏の「宗教学」を読む
ミュージシャンやDJ、ラジオパーソナリティー、ジャーナリストなど
幅広い活動を行っているモーリー・ロバートソンのニコ生番組、それがモーリー・ロバートソンチャンネル。
月2回、様々なゲストを呼び話を聞く。
宗教学者の大田俊寛氏が出演した回を見た。
上に貼った動画の5:00~くらいで彼が話している宗教学を志すようになったきっかけが面白い。
大学に入学するために受験勉強をしなければならないが、他人を蹴落として合格するというあり方、生き方に疑問を感じ、高校生にして色々な宗教団体や霊能者に会いに行ったという。
そういう場合カルトに足を絡めとられる危険が大きいのではと感じられるが、彼は宗教者たちと議論をして勝ってしまったそうだ。
物腰は非常に柔らかいが、オウム真理教に親和的な態度をとっていた日本の宗教学に対してそもそも理論や体系が形成されていない、と手厳しい。
興味が湧いたので本を読んでみた。
「宗教学」
大田俊寛氏の宗教に対する理解が体系的に記された本なのかと思っていたら、
表紙にはブックガイドシリーズ基本の30冊と書いてあった。
序文にて宗教の四段階構造論として彼の理論が10数ページほどで簡単に説明されている。
それ以降は宗教を理解するうえで押さえておくべき30冊の書籍について、著者によって数ページほどで概観を知ることができるように要約されている。
内容について簡単に。
我々はクソもミソもいっしょくたにして宗教と呼ぶが、宗教と呪術という二つの側面がある。
著者は宗教の基本構造を、
「虚構の人格」を中心に掲げ、そこから発せられる「法」を紐帯として、「共同体」を結成すること。
と定義している。
人間は一人では生きていくことができず、何かしらの共同体に属する。
一人ひとり好き勝手に考え行動していてはその共同体の存続は保証されない。
ある程度統一された共同体の運営がなされ、それによって各人が生きていくために神、祖霊、法人、王統などの「虚構の人格」が据えられ、規範や法を発する。
ただ、共同体に馴染めず疎外されるものがどうしても出てくる。
そういった人々は心身に変調をきたし、トランス状態になったり霊と交流したり神懸かったりといった様々な心理状態を引き起こす。
古くはシャーマンや祈祷師などが治療にあたっていたこれらの事象が呪術だ。
宗教にはこのような二面がある。
原始時代は家族、氏族を共同体とし族長が共同体の長と呪術的役割を兼ねる。
古代では複数の部族を武力で束ねたものが王となり共同体の中心になる。
王が神聖な存在として民族宗教の祭司的役割を兼ねる場合と、祭司によって神聖性を担保される場合がある。呪術は民間信仰として外縁部に移る。
中世においては排他性を伴う民族宗教から神の下の平等を唱える一神教が主流となり、政治運営の実務を担う世俗の王権と宗教を司る教権に分かれていく。
近代になると宗教対立の激化を受けて、社会契約論が生み出され人民の意思の総体としての国家に主権を与えることになった。
このように「虚構の人格」や宗教、呪術を機能分化させながら発展してきた流れを著者は宗教の四段階構造論として書いている。
そして著者が概説する30冊の著作によって、4つの時代における宗教のあり方や、社会学や心理学がどのように宗教や呪術を見てきたかということなどを多少知ることができる。
我々の労働観にはプロテスタントの思想が影響を与えている。
オウム真理教という現代において暴走した呪術の源流を辿ればロマン主義があり、ナチズムの背景には神智学などオカルティズムがあった。
日本人は無宗教とよく言われるが、それは違うだろう。
社会のありようを理解するために本書を読んでおいて損はない。
このブログは非常に雑な要約なので是非実際に手に取ってもらえたら。